エステティシャンが会社設立すべきタイミングは? 法人・個人の違いを確認
「独立を考えているが、法人と個人のどちらを選ぶべきか分からない」「売上が増えてきたので会社設立を検討している」という方は多いのではないでしょうか。
本記事では、エステティシャンが会社設立すべきタイミングや、法人と個人それぞれのメリット・デメリットなどを紹介します。
会社を作ろうか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
▼ 目次[表示] ▲ 目次[非表示]
エステティシャンが会社設立すべきタイミングとは?
エステサロンを経営する場合、一般的には、お店の名前は会社名ではなく屋号を使うことが多くなっています。そのため、法人化したからといって、お客様から会社としての信頼度が上がるとは考えにくいでしょう。
ではなぜ法人化を検討するのかというと、節税面でメリットが大きいからです。
目安として、売上ではなく利益が500万円〜600万円を超えている場合、会社設立を検討すると良いでしょう。これよりも利益が下回っている場合は、個人の方が節税効果が大きくなります。
節税面でのメリットがあるからなのね
会社設立(法人化)のメリット・デメリット
税制面以外にも会社を作るメリットが存在するため、確認しましょう。併せて、デメリットについても解説します。
メリット
主なメリットとして、次の5つが挙げられます。
- 節税に繋がる
- 消費税が最大2年間免除される
- 融資を受けやすくなる
- 社会保険に加入できる
- 事業を継承しやすくなる
前述のように一定の利益を上回っている場合、法人化による節税メリットが大きくなります。また、自分の給料については給与所得として計上できるため、控除が適用されます。
課税売上が1,000万円を超えなければ、消費税が最大2年間免除になることもメリットです。
そのほか、経営者本人や家族が社会保険に加入できるため、万が一の事態における保障を受けられます。また、国民年金だけでなく厚生年金も受け取れるようになります。
もし事業を継承する場合、決議のみで代表者を変更できることも特徴です。
保障面でもメリットが多いんだ!
デメリット
一方、デメリットとして次の2つがあります。
- 所得が低いとメリットを活用できない
- 設立までにお金と時間がかかる
適切でないタイミングで法人化してしまうと、税制面におけるメリットが裏目に出てしまいます。
個人の場合は売上が赤字であれば納税義務が発生しませんが、法人の場合は法人住民税の支払い義務が発生します。そのため、赤字であっても最低限の支払いをしなければなりません。
基本的には、所得や規模が大きくなるほどメリットも大きくなるため、タイミングの見極めが重要です。
また、会社登記にはお金と時間がかかります。会社の種類によって必要な費用は異なりますが、最低でも10万円は必要になることを押さえておきましょう。
- POINT
-
- 法人の場合、赤字でも法人住民税の支払いが生じる。
- 会社登記に必要なお金と時間を確認しておく。
個人事業主のメリット・デメリット
法人に目を向けてきましたが、個人事業主でいることのメリットも存在します。先ほどと同様に、デメリットも解説しますので確認しましょう。
メリット
まず、メリットとしては次の4つが挙げられます。
- 確定申告が簡単
- 費用をかけず簡単に手続きできる
- 副業として始められる
- 売上が低い場合は税負担が少ない
法人の場合は確定申告時の負担が多く、知識がない場合は税理士を雇う必要もあるでしょう。しかし、個人であれば確定申告が比較的簡単であるため、労力やコストをかけずに経理業務を進められます。
また、開業する際も開業届を提出するだけで良いため、ハードルが低いことが特徴です。
さらに、会社員として働きながら副業としてできるため、手軽に始められるでしょう。
売上が安定するまでは、個人事業主のほうが税負担が少ないため、利益を残しやすくなります。
- POINT
-
- 個人事業主のほうが確定申告時の労力やコストが少ない。
- 副業からでも始められる。
- 税の負担が少ない個人事業主から始めるとよい。
デメリット
反対に、デメリットとしては次の3つがあります。
- 社会的信用が低い
- 責任が無限である
- 利益が増えると税負担が大きくなる
まず、社会的信用が低いため、店舗の改修工事や新店舗の増設などで費用が必要になった際に、融資を受けにくくなります。
また、法人の場合は責任が有限となりますが、個人の場合は責任が無限に発生します。そのため、業績が悪化して経営がマイナスに傾いた場合、経営者本人が全ての責任を追わなければなりません。
そのほか、利益が少ない場合に税制面のメリットが大きいため、利益が増えると税負担が大きくなることにも注意が必要です。法人化を考える目安としては、先ほど挙げた年間利益500万円〜600万円を参考にしてください。
- POINT
-
- 社会的信用が低く、銀行等の融資を受けにくい。
- 利益の増大によって税金の負担が増える。
エステティシャンが会社設立する場合のポイント
ここでは、会社設立において決めるべきことや必要な費用、準備すべきことなどを紹介します。
株式会社と合同会社の違い
会社の種類にはいくつかあり、代表的な候補として「株式会社」と「合同会社」が挙げられます。
どちらも会社組織であり、税制面におけるメリットは変わりはありません。また、社会的信用という面では、合同会社のほうが信用度が低くなります。
設立時における大きな違いは、費用です。株式会社を設立する場合は資本金を除いて242,000円が必要ですが、合同会社の場合は100,000円ほどで登記できます。
株式会社の場合は、公証人役場で定款を認証したあと、法務局での登記が必要です。一方、合同会社であれば定款認証が不要であり、法務局で登記するだけで良いため、費用を抑えて設立できます。
また、いずれの場合においても、設立時には次のものが必要です。
- 設立登記申請書
- 定款
- 登録免許税納付用台紙
- 発起人決定書
- 会社の届出印
- 印鑑証明書
- 資本金
さらに、設立が完了したら会社名義の銀行口座を作ったり、必要書類を税務署や県税事務所、役場へ提出したりする必要があります。
漏れのないように書メモしておかないと
どちらを選ぶべきか?
いざ法人化しようと思っても、株式会社と合同会社のどちらを選ぶべきか迷ってしまう場合もあるでしょう。
ここでは、それぞれに向いている場合について紹介しますので、会社形態選びの参考にしてください。
まず、株式会社が向いているのは次のような場合です。
- いずれ株式上場を目指している
- 取引先に法人が多い
- 社員を多く雇用したい
- より多くの資金を調達したい
反対に、合同会社は次のような場合に向いているでしょう。
- 設立費用・維持費を抑えたい
- 出資額に関わらず利益を配分したい
- 資金調達を考えていない
- コンパクトに事業を行いたい
このような違いがありますが、どの形態で設立すべきか分からないという場合は、専門家に相談することも方法の一つです。
詳しい人に聞くのが一番ね
個人事業を法人化する場合はどうしたら良い?
個人事業主として事業を行っている状況で会社設立を検討する場合、新たに法人を設立する方法と、今行っている事業で法人成りする方法の2種類があります。
新たに法人を作る場合は、一般的な流れで登記が必要です。
また、現在の個人事業で法人成りする場合は、会社を設立したあと、事業に関わる資産を移行する必要があります。
エステサロンの場合、個人として所有している機材を法人に適切に売却しなければならず、法人が所有して利用するための手続きが必要です。
売却金額によって税金の支払いが発生する場合もあるため、税理士に相談した上で進めることがおすすめです。
- POINT
-
- 新設する場合は通常の流れで手続きする。
- 既存の個人事業を法人化する場合は、資産を移行する必要がある。
- 状況によって必要な手続きや税金の支払いが異なるので確認する。
会社設立で失敗しないためのポイント
エステサロンとして会社設立した場合、個人よりも経営の難易度が上がります。そのため、失敗しないためのポイントとして、次の3つを押さえておくと良いでしょう。
- 店舗のコンセプトを明確にする
- リピーターを増やす
- 経営者自らが成長することを忘れない
サロンは店舗数が多いため、他店と差別化するために魅力的なコンセプトを掲げ、発信していくことが欠かせません。メニューやターゲットを絞り込むことでも、差別化しやすくなります。
また、売上を安定させる必要があり、そのためには継続的に来店してくれるリピーターを増やすこともポイントです。また来店したいと思ってもらいやすい仕組みを考え、試行錯誤していきましょう。
そして、経営者自身が経営について学び、成長していくことも忘れてはなりません。施術の技術だけでは経営を成功させることは難しいため、経営の仕組みを勉強することも重要になります。
経営面でもコンセプトが重要ね
まとめ
今回は、エステティシャンが会社設立を考えるべきタイミングや法人化のメリット・デメリット、注意したいことなどを解説しました。
法人・個人それぞれに特徴があるため、ご自身の店舗はどちらを選んだほうがメリットが大きいのかをよく検討し、経営の形態を決めていくと良いでしょう。