フリーランスの消費税免除は本当に得なの? インボイス制度との関係性とは
フリーランスとして仕事をしていく中で、消費税の制度について理解しておく必要があります。
今回は、免除・課税となる条件や課税方式、納税の流れなどを解説します。また、2023年10月から始まるインボイス制度との関係についてもお話ししていますので、ぜひ参考にしてください。
どんな制度なんだろう?
▼ 目次[表示] ▲ 目次[非表示]
フリーランスが消費税を受け取る・払うタイミングとは?
私たちが生活する中で、どのようなタイミングで消費税を受け取ったり、支払ったりしているでしょうか。
それぞれの場合について、解説していきます。
受け取る場合
フリーランスが消費税を受け取るタイミングは、次の2つが挙げられます。
- 顧客に商品を販売したとき
- 取引先から報酬をもらうとき
何かの商品を販売したり案件の報酬をもらったりするのと同時に、元々の額面に加えて消費税10%をプラスで受け取ります。
消費税は身近だね
払う場合
反対に、払うタイミングとしては次の3つがあります。
- 商品やサービスを購入するとき
- 外注先に報酬を渡すとき
- 国に対する課税徴収分
仕事やプライベートを問わず、何かの商品やサービスを購入するときには、消費税の支払いが必要です。
また、案件を誰かに外注し報酬を渡すときには、別に報酬額の10%が税として計上されます。
そして、消費税の課税事業者となっている場合、国に納税しなければなりません。ここから先では、事業者として納税が必要なケースや、必要だった場合の納税方法を解説します。
フリーランスにおける消費税免除・課税の条件
一定の条件を満たした場合、国へ納税する必要があります。
ここからは、免除されるケースと納税が必要なケースの2つについて、それぞれ解説します。
免除されるケース
フリーランスが消費税免除になる条件は、次の通りです。
- 年間の売上が1,000万円未満
- 開業から2年間
まず、課税売上高が1,000万円未満の場合、消費税を納税する必要はありません。課税売上高とは、課税取引の売上や輸出取引などの売上の合計額から、値引きや返品、割り戻しなどを除いた金額を指します。
毎年1月1日から12月31日までの課税期間を対象としており、前々年の売上で計算されます。
次に、開業から2年間経っていない場合も免除の対象です。
なぜ2年目から対象になるのかについてですが、前述のように、課税期間の基準期間は前々年でした。そのため、開業3年目になったタイミングで売上が1,000万円を超えると課税事業者になります。
- POINT
-
- 課税期間は毎年1月1日から12月31日まで。
- 開業から2年未満は消費税の納付は免除される。
- 1,000万円を超えると開業して3年後には課税事業者として消費税を納税する。
納税が必要なケース
一方、納税が必要なケースとして挙げられるのは「開業3年目以降で、売上が1,000万円を超えている場合」です。年間の売上高が1,000万円を超えると、その対象の期間から課税事業者となります。
この場合、売上と一緒に預かった消費税から経費と一緒に支払った消費税を除き、差額の納税が必要です。
また、売上額を満たしていない場合でも、「消費税課税事業者選択届出書」を提出することで課税事業者になれます。
「課税事業者になる必要なんてあるの? 」と思うかもしれませんが、これには2023年10月から適用されるインボイス制度が関係しています。
気になる
インボイス制度との関係性
インボイス制度とは、日本語で「適格請求書保存形式」という意味です。売り手が買い手に対して正確な税率や消費税を伝えるものであり、請求書に登録番号を記入しなければなりません。
この制度が導入された背景には、2019年に適用された軽減税率が関係しています。8%と10%の税率が同時に適用されると事務作業が複雑化してしまうため、処理の効率を高めるために制度が導入されました。
インボイスを発行できるのは課税事業者のみであるため、税制控除の観点から、仕入れ側は免税事業者との取引について検討しなければなりません。
フリーランスが免税事業者でクライアントが課税事業者だった場合、クライアント側の負担が増えてしまうため、取引が中止になる可能性もあります。
また、引き続き取引してもえらる場合でも、報酬単価が下がる可能性があるでしょう。
その対処法の1つとして、年収1,000万円以下でもインボイスを発行できるように課税事業者に切り替える方法が挙げられます。
- POINT
-
- 税制控除を考慮する仕入れ側は、免税事業者とやりとりすると負担が増えてしまう。
- 年収1,000万円以下でも課税事業者に切り替えることはできる。
消費税の課税方式や納税の流れを確認
ここからは、課税対象となった場合の、消費税の課税方式や納税の流れを確認していきましょう。
課税方式は2種類
フリーランスは、次の2種類より課税方式を選べます。
- 簡易課税方式
- 原則課税方式
簡易課税方式で納税額を求める場合、受け取った消費税に対して一定の割合を掛けます。自分が受け取った消費税の金額が分かれば、同じ割合で算出できるため、計算方法はかなりシンプルです。
また、業種によって異なる場合がありますが、次に紹介する原則課税方式よりも納税額が少なくなることが特徴です。
ただし、大規模な設備への投資をした場合、反対に納税額が多くなってしまう場合があったり、売上高が5,000万円以下の事業者しか選択できなかったりするため、注意しなければなりません。
簡易課税方式を希望する場合、課税期間が始まる1日前までに届け出る必要があります。
- POINT
-
- 受け取った消費税の金額に対し一定の割合で算出する。
- 原則課税方式より納税額は少なく済む。
次の原則課税方式では、自分が支払った消費税と受け取った消費税の差額を納税します。2通りの計算方法があり、次のように異なります。
- 一括比例配分方式:仕入れ税額の合計に課税売上割合を掛ける
- 個別対応方式:仕入れ税額を課税売上・非課税売上のそれぞれに分けて算出する
どちらが良いかを選ぶのが難しい場合は、税理士などに相談すると良いでしょう。
理解した上で判断しましょう。
納税の流れ
主な流れとしては、次の通りです。
- 課税方式を選ぶ
- 経理の処理方法を選ぶ
- 取引を登録・確認する
- 申告書を作成・提出する
- 消費税を納め、帳簿に登録する
まずは、課税事業者として申告するために「消費税課税事業者選択届出書」を管轄の税務署に提出します。一緒に課税方式についても決めておき、簡易課税方式を選択する場合は「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しましょう。
続いて、確定申告や納税に向けて帳簿に取引を登録します。経理の処理方法としては、「手書き」「クラウド会計ソフト」「表計算ソフト」「税理士へ依頼」などがあります。
取引を登録できたら、ミスがないかを確認しましょう。記入漏れやミスを防ぐためにも、こまめに記入・チェックすることがポイントです。
そして、翌年の3月31までに記録した取引をまとめ、申告書を作成して管轄の税務署に提出します。申告と同時に納税も行い、完了したら帳簿に仕分けを残しておきましょう。
私にできるか心配…
フリーランスが消費税を扱う上でのポイント
ここでは、次の2点を紹介します。
- クラウド会計の導入で業務を楽にできる
- インボイス制度について理解し、対策を取る
フリーランスとして業務を継続するために重要なポイントとなりますので、しっかりと確認していきましょう。
クラウド会計の導入で業務を楽にできる
消費税の計算だけでなく、フリーランスは収支管理や確定申告などの経理作業が発生します。なんとなく仕組みはわかっているものの、いざ課税対象となった際にどうすべきか分からず、困ってしまう人が多いのも事実です。
そこで、税制度をできる限り簡単に扱う方法として、クラウド会計の導入がおすすめです。
クラウド会計とは、いつでもオンラインで会計処理が行えるサービスであり、毎月1,000円から2,000円ほどで機能を使えます。
主な機能としては、開業届や確定申告書、請求書の作成のほか、記帳、原価主脚の計算、税理士との情報共有などがあります。
フリーランスとして必要な書類の作成は一通り対応しているものが多いため、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
- POINT
-
- 経理に必要な書類の作成が簡単にできる。
- 毎月定額で気軽に利用できる。
インボイス制度について理解し、対策を取る
インボイス制度の導入によって、主に免税事業者に大きな影響が出る場合があります。そのため、適格請求書を必要とする事業者と取引している場合は、今後の働き方について検討しなければなりません。
もし課税事業者となった場合、消費税の納税義務が発生するのとともに、原則として2年間は免税事業者に戻れないため注意が必要です。
今後の対策については、どちらを取るべきかをよく検討した上で決める必要があります。
まずは理解することが大事だね
まとめ
本記事では、フリーランスが消費税免除となる条件や、反対に課税対象となる条件などを紹介しました。
また、インボイス制度によってこれまでと同じように仕事を受けられなくなる場合もあるため、状況に応じて対応していく必要があります。
どちらの場合も長所・短所があるため、今後の方向性についてしっかりと考え、適切な選択をしていきましょう。