美容師が個人事業主になるためには? 美容室開業の手続きや注意点を解説
現在美容室で働いている美容師のなかには、独立したいと考えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、個人事業主になった場合のキャリアの種類やメリット・デメリット、必要な手続きなどを解説します。個人の美容師として安定的な収入を得られるように、準備を進めていきましょう。
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美容師が個人事業主になる方法とは?
美容師の業務形態として、大きく分けて雇用契約と個人事業主の2つがあります。
雇用契約とは、店舗に属して勤務する正社員のことです。また、個人事業主とは、独立して事業を行うことをいいます。
さらに、個人事業主のなかでも「業務委託・面貸し・開業」の3つの括りに分けられるため、それぞれの違いを見ていきましょう。
どう違うんだろう?
業務委託
個人として美容室と契約し、依頼された仕事をこなすことで報酬を受け取れる仕組みです。
店舗が人手不足の際に仕事を受けることが多く、正社員のように給与の保証はありません。
とはいえ、拘束時間が短いため、副業として業務委託契約を結ぶ人は多いようです。
面貸し
美容室やサロンなどにおける、一部のスペースを借りて施術を行う仕組みを、面貸しといいます。
業務委託も同じように店舗で施術しますが、大きな違いは「誰が集客したか」です。業務委託の場合は、店舗側が集客したお客様に対して施術するのに対し、面貸しは個人の美容師がお客様を集客しなければなりません。
そのため、既存顧客のほかに新規顧客を増やしたいのであれば、自身で集客する必要があります。
開業
上記2つのキャリアでは、既存の美容室のスペースを使って施術をすることができました。
しかし、開業する場合は自分の店舗を構えることになります。そのため、物件探しや契約、リフォーム、集客など、経営に関わる全ての業務に対応しなければなりません。
自由度の高い独立方法ではありますが、自分の行動次第で経営が傾くこともあるというリスクに気をつける必要があります。
- POINT
-
- 自由な反面、経営は自己責任となるためリスクを自覚する。
美容師が個人事業主になるメリット・デメリット
では、美容師が個人として独立することで、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
ここからは、それぞれの要素について紹介します。
メリット
主なメリットとして挙げられるのは、次の3点です。
- 働き方を自由に選べる
- 人間関係のトラブルが少ない
- プライベートの時間を確保しやすい
個人事業主は、いつどのくらい働くのかを自分で決定できます。そのため、雇用されていた時のような残業や休日出勤が減るでしょう。
また、組織に属していないため、人間関係のトラブルが少ないことも特徴です。施術時のお客様とのやり取りや、契約を結んでいる美容室との最低限のコミュニケーションのみで業務を進められるため、あまり人と関わりたくない人でも働きやすい方法であるといえます。
そして、美容室で開催される勉強会や休日に行われる講習会に参加する必要がなくなるため、プライベートの時間を確保しやすいことも挙げられます給料が発生する業務のみに専念し、他の時間をスキルアップや余暇に充てられるでしょう。
理想の働き方
デメリット
一方、デメリットとしては次の3つが挙げられます。
- 経理業務が増える
- 給料が下がる場合がある
- 自分で知識を学ぶ必要がある
個人事業主になった場合、正社員の場合は店舗が対応していた経費の計上や確定申告、保険の加入などの業務を、全て自分で行わなければなりません。
また、拘束時間が減ることで給料が下がる場合もあるため自身で積極的に集客したり、他の収入源を作ったりする必要があるでしょう。
そして、雇用されていた時とは異なり、勉強会などで学べる機会がありません。そのため、自分で必要な知識を身につけることが求められます。
強い意志が必要だね
個人の美容師の平均年収とは?
正社員として働いている美容師の平均年収は300万円ほどですが、個人事業主の場合、年収相場は100万円から500万円ほどと言われています。
かなり幅がありますが、独立すると固定給ではなく、作業量に対して報酬が発生する仕組みです。そのため、勤務時間が短い場合は年収が低く、長い場合は年収が高くなる傾向にあります。
また、店舗を持つ場合は賃料などの固定費が発生するため、売上から経費を引いた金額が利益となります。
経営も常に頭に入れておこう
美容師が個人事業主になるために必要な手続き
個人事業主になるためには、次の4つの手続きが必要です。
- 開業届・青色申告承認申請書の提出
- 開設届の提出・美容所登録
- 国民健康保険への切り替え
- 国民年金の加入
それぞれ解説しますので、流れを確認していきましょう。
開業届・青色申告承認申請書の提出
まずは、納税地を管轄している税務署「開業届」を提出しましょう。原則として、開業から1ヶ月以内に手続きをすることが求められています。
また、確定申告の際に青色申告をするための「青色申告承認申請書」についても、開業届と併せて提出します。
確定申告には「青色申告」と「白色申告」がありますが、青色申告のほうが節税面におけるメリットが多いため、提出しておくことがおすすめです。屋号で口座を開設したり、補助金などの申請をしたりする際にも必要になります。
青色申告に決まりね!
開設届の提出・美容所登録
店舗を構えて開業する場合、保健所に開設届を提出する必要があります。保健所によって建物や設備の点検が行われ、基準を満たしていると判断されれば美容所登録が完了します。
業務委託や面貸しで独立する場合、この手続きは必要ありません。
もし美容所登録せずに営業した場合、罰金や営業停止などの処分が課せられてしまいます。そのため、余裕を持って申請するようにしてください。
提出書類については、開設届と併せて構造設備の概要や施設の平面図、見取り図などが必要です。
また、従業員を雇用する場合は、従業員名簿や従業員の美容師免許、医師の診断書、登記簿謄本などを提出しなければなりません。あらかじめ必要書類について確認しておくと、開業をスムーズに進められます。
- POINT
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- 店舗で開業する場合、保健所に開設届を提出する。
- 自分の状況に応じて必要書類や提出期限を確認しておく。
国民健康保険への切り替え
美容室で勤務していると社会保険に加入していることが殆どですが、退職した場合は、14日以内に国民健康保険への切り替えが必要です。
手続きは、市区町村の窓口にて行います。次の書類を用意し、管轄の役所へ提出しましょう。
- 資格喪失証明書または退職証明書(健康保険を辞めたことがわかるもの)
- マイナンバーが確認できるもの
- 本人確認書類(運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど)
- 通帳もしくはキャッシュカード、金融機関の届出印(口座振替にする場合)
国民年金の加入
正社員であれば、基本的には給料から年金保険料が引かれます。
しかし、個人事業主となった場合は新たに加入しなければならないため、国民健康保険と同様に、退職から14日以内に市区町村の窓口で申請しましょう。
必要なものは、年金手帳もしくは基礎年金番号通知書です。
- POINT
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- 国民年金への加入も自ら行う。
個人事業主になった美容師が注意したいポイント
独立した場合、次の2つのポイントに注意する必要があります。
- 経費で落とせるものを把握しておく
- 節税対策をする
それぞれについて、内容を見ていきましょう。
経費で落とせるものを把握しておく
確定申告を自分で行う際のために、どこまで経費として計上できるかを確認しておきましょう。
業務に関わるものは基本的に経費となり、主に次のような科目が挙げられます。
- 経費で落とせるもの
-
- 家賃
- 水道光熱費
- 人件費
- 材料費
- 通信費
- 消耗品費
- 広告費
- 保険料
- 交通費
- 修繕費
- 各種税金
など
注意点として、自宅で開業する場合は、家賃や光熱費の扱いに気をつけなければなりません。敷地面積から店舗として使っている割合を算出し、計上する必要があります。
また、衣服代や美容室代、接待交際費なども経費として計上できますが、業務に関わるものでない限りは認められないため注意しましょう。
迷ったら確認しましょう
節税対策をする
個人事業主が行うべき節税対策としては、「青色申告の利用」と「漏れのない経費の計上」が挙げられます。
青色申告は白色申告に比べてメリットが多く、主に次の3点が挙げられます。
- 所得控除が最大55万円
- 3年間の赤字繰越が可能
- 青色専従者の給与経費化の上限なし
白色申告のほうが手続きはシンプルですが、節税効果が高いのは青色申告であるため、ぜひ利用してみてください。
また、漏れなく経費を計上することも大切です。こまめに帳簿をつけることで、計上漏れを防げるでしょう。
- POINT
-
- 青色申告だと節税効果が高いのでおすすめ。
- 帳簿はこまめにつける。
まとめ
今回は、美容師が個人事業主になるための方法や注意点などについてまとめました。
独立にはメリットとデメリットの両面があるため、十分に理解した上で開業手続きを進めていきましょう。また、確定申告や節税についての知識を深め、より多くの利益を残せるようにしてみてください。