美容室の開業に向けて必要な保健所への手続きとは?
美容室をオープンさせるのに、まずは保健所への手続きをどうしようとお悩みのこれから経営者になられる方へ、事前に準備しておかなければならない書類や店舗の内装、設備の整備、検査で指摘されやすい衛生面など、そのポイントをわかりやすく解説していきます。
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美容室の開業までの保健所とのかかわり方をわかりやすく解説
美容室をオープンするにはどうしたらいいの? と不安な気持ちでいっぱいだと思います。美容室を開業するには、店舗を構える所管の保健所に開設届を提出して、基準に適合しているか検査を受けて保健所から発行される確認書を受け取らなければ開業できません。そこで、ここでは保健所への届け出について流れと合わせて解説していきます。
保健所への届け出と認可までの流れ
- 主な流れ
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- 立地条件等を考えて、店舗の開設場所を決定
- 一度所管の保健所に行き相談
- 開設届をはじめとする書類の作成
- 保健所に開設届の提出(保健所へ2回目)
- 確認証を保健所に取りに行く(保健所へ3回目)
①立地条件等を考えて、店舗の開設場所を決定
店舗イメージを膨らませ活気あふれるサロンをイメージしがちですが、確実に成功する根拠を確立させていきます。立地条件等を考えて、店舗の開設場所を決定します。設計士又は内装業者にイメージを伝え、設計図面を起こしていただきます。内装業者は美容室の工事経験がある所がオススメです。
②一度所管の保健所に行き相談
図面が出来上がったら、ここで、一度所管の保健所に行き相談します。美容室の構造・設備などが法律や条例の基準に適合しているかどうかの確認を取る為には、工事着工前に保健所へ事前に相談が必要です。作業面積、面積に対するセット面の数量、待合、床・腰張り、洗髪場、洗い場、消毒設備・機器、収納、照明、換気など細部にわたり設定事項が有る為です。構造設備に適合しているか、アドバイスを頂きます。修正を求められた場合、内装工事に入っていれば、修正をかけなければなりませんし、余計な費用も発生してしまいます。問題なければ工事着工してもらいます。また、保健所に相談しに行ったときに必要書類をもらってきます。
③開設届をはじめとする書類の作成
健康診断および診断書の発行(美容師免許を所持している方全員)。
④保健所に開設届の提出(保健所へ2回目)
この時点で工事日程と合わせて、確認検査日の日程を決めていきます。開設届の提出は検査を希望する10日~2週間前までに済ませるようにします。定められた日程で確認検査が行われます。開設予定店舗へ保健所職員が直接来訪し、構造基準が届け出と相違ないか検査します。
⑤確認証を保健所に取りに行く(保健所へ3回目)
この検査で認定されれば2~3開庁日後に確認証が発行されます。確認証は、申請者が保健所に取りに行く事になります(保健所へ3回目)。
これで美容室が正式に開業可能になります。宣伝広告などでオープン日を記載する場合、オープン日の摺り合わせを内装業者、保健所、宣伝広告担当業者との打ち合わせをしっかりと行っておきます。
保健所への提出書類
- 開設届提出時に合わせて必要な書類
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- 美容所開設届
- 構造及び設備の概要
(作業面積、面積に対するセット面の数、照明、換気など) - 美容所の平面図
(寸法及び設備の配置を明示) - 美容所への案内図(地図)
- 美容師の免許証(写し)
- 美容師についての伝染性疾病の有無に関する医師の診断書
(結核・伝染性皮膚疾患の有無が記載された、発行3ヶ月以内の診断書) - 従業者名簿(従業員を雇用する場合)
- 申請者が法人の場合は、登記事項証明書
(発行6ヶ月以内の原本) - 管理美容師をおく場合は、管理美容師であることを証する書類
- 外国人登録証明書、住民票の写し
(国籍等を記載したものに限る、開設者が外国人の場合) - 開設検査手数料
(地域によって異なります。事前に確認しておいてください。約2万円前後)
開設届の提出に於いて注意すべきこと
美容所の開設届には、美容所の名称(屋号)、所在地、開設予定年月日などを記入します。構造設備などの詳細も記入します。別に添付する施設平面図には、美容作業椅子、洗浄設備や消毒設備、待合所など主要な設備と施設の内のり寸法(単位cm)を記載します。美容所の案内図(地図)は店舗を中心に道路や目印になる建物などを書き入れます。商業施設内の場合にはフロアマップで店舗の位置を示してください。美容師免許証、管理美容師であることを証する書類は原本も必ず持参しましょう。
確認検査を受ける
開設届を含む必要書類を保健所に提出すると確認検査の日程が決まります。この検査で基準に適合し認定されなければ確認証が発行されず開業できません。その基準は多岐にわたりますが基本的なものは下記のとおりです。
- 作業所と待合所を仕切って配置する
- 作業所の面積に応じた椅子の数を設置する
- 消毒用シンクを設置する
作業所の面積9.9㎡に付き設置できる椅子の数は4台となります。以降、23.1㎡までは3.3㎡毎に1台、23.1㎡以上からは3.3㎡毎に2台増やすことが出来ます。また、詳細な構造基準のチェックポイントは次で解説していきます。
構造設備基準を無事クリアするために
美容所施設の構造基準設備に於いては、沢山の項目がありその全て対応出来ないと認可が下りません。先に記載した項目は店舗内装における基本的な内容ですので、内装業者との打ち合わせをしっかり行ってください。
- 天井の高さは、床面から2.1m以上あること
- 床・内壁の材質は不浸透性の材料であること
- 洗髪の為の流水式の設備を設けること
- 流水式の手洗いと洗浄用の設備があること
- 作業業は明るく100ルクス以上あること
- 換気が十分に行える構造設備であること
- 外部や生活空間と完全に区分すること
- 害獣害虫などの発生・侵入を防止できること
- 従業員控室は、壁・扉などで作業場と分けられていること
- 待合所は作業に支障ない位置に設けること
設備面での基準は下記の記載となります
- 器具などの消毒設備があること
- 消毒済みと使用したものに分けて保管できる設備を整えること
- 消毒済み器具の保管設備には、消毒済みの標示をすること
- 蓋つきの汚物箱、毛髪箱を設けること
- 外傷の手当てに必要な救急薬品および衛生材料を備えておくこと
設備構造におけるポイント
構造設備基準は店舗の内装をデザインする時点で設計に盛り込んでおかなければなりません。このことを内装業者に伝え設計してもらい、計画を立てていきます。床や内壁の材料はコンクリートやタイル、クッションフロアやビニールクロスなどを選びましょう。シャワーボールのシンクの他に器具などの消毒用シンクも必要になります(カラー用のシンクとの併用化)。作業所の明るさは100ルクス以上必要です。さらには、300ルクス以上あることが望ましいです。換気に於いても室内の炭酸ガス濃度が0.5%以下になるような設備を整えます。
衛生設備面のポイント
美容室を営業していくのに重要なのが衛生管理になります。血液や唾液を媒体として感染するウィルスへの二次感染を防ぐためになります。理容師法、美容師法により皮膚に接触する器具はお客様一人毎に消毒することが義務づけられています。その為、構造設備基準でも、器具などの消毒の設備は必須になります。消毒には消毒薬を使用する方法、紫外線消毒器や蒸気消毒器を使用する方法など、消毒したい器具の種類によっていくつかの方法があります。いずれも正しい方法で行われなければ効果がなく器具を傷める結果になりますので注意が必要です。
必ず準備しておきたい消毒器具
紫外線消毒器などは準備されるものの、消毒薬を使った消毒方法に用いられる器具等は以外にも忘れがちになります。下記の物も準備しておきましょう。
- 蓋つきのパット
- メスシリンダー500ml・50ml
- 消毒薬
- 密閉ビン、カット綿
- 使用済み器具容器
- 消毒済み器具容器
まとめ
スムーズな開業のためにもしっかりと準備することがとても重要になります。美容室の開業には保健所への届け出がないと開業にはなりません。店舗を構える立地条件から、内外装の店舗イメージ、従業員の技術レベル、接客レベル、カウンセリングに必要な顧客マネージメント能力など、ハード面とソフト面の両方のバランスが必要になってきます。
保健所に書類を提出するだけでなく、経営者の思いの全てが図面に書き込まれています。それが設備構造基準をクリアし、安全で安心してお客様を向かえ入れる美容室が誕生します。その為にも、業者との打ち合わせや、保健所での事前相談が大変重要な課題になります。
また、お客様に安心を提供し、通い続けていただく為にも、衛生管理は継続して行っていかなければ信用されません。継続させる習慣も作っていきたいものですよね。
保健所の事前相談から、開設届を提出し、確認検査日まで約10日程かかります。確認検査終了後、認可がおりて確認証が発行されるのに2~3日必要になりますので、オープンの日にちを決めてる場合には、逆算してスケジュールを組み、スムーズに進行する計画を立てて行きましょう。
保健所で確認証を交付されたら、さぁ開店です。輝かしい未来に向かっての活躍をお祈りしています。