美容師不足の原因とは? あなたのサロンが美容師に選んでもらうために
今から20数年前の事ですが、美容師が脚光を浴びるテレビ番組がありました。
さらには木村拓哉さんが美容師役を演じるドラマまで登場し、美容師という職業が脚光を浴びることになりました。
それにより、カリスマ美容師という流行語も生まれ、美容師を目指す若者たちであふれかえりました。
それから20年。
時代は流れ、今の美容業界では求人を募集しても人材が集まらず、求人の経費がかさんでサロン経営者を苦しめています。
どうしてこんな状況になってしまったのか、打開策はあるのでしょうか?
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カリスマ美容師時代から一転し美容師不足が深刻化
1999年~2000年にかけて、深夜放送にも関わらず大人気のテレビ番組でシザーズリーグがありました。番組内では、ヘアスタイルの対決を行うもので、出演した美容師が人気となりカリスマ美容師として称されるようになりました。
さらには、木村拓哉さんが演じる美容師役のビューティフルライフというドラマも高視聴率を上げ、美容師と言う職業が話題になり、美容師ブームの到来でした。その影響で、高校生をはじめ若者たちには将来なりたい職業で上位に来るほど人気の職業となり、誰もがカリスマ美容師になりたいと願うようになりました。
そして現実に、カリスマ美容師になった美容師さんたちが力を付けて独立し、全国にお洒落な美容室が誕生し、美容室軒数も一気に増えていきました。
しかしながら、今ではどうでしょうか?
今の美容業界では、美容学校の定員割れが起きている地域もあり、さらには美容室への就職率も低下してきています。
求人募集しても人材が集まらず、求人経費がかさんで経営者の悩みの種となり、美容師不足は深刻化してきています。
国家資格でもある美容師免許を取得して、サロンで経験を積めばお客様もついて仕事にやりがいを持てる職業なのに、なぜ美容師不足となってしまっているのでしょうか?
美容師不足の原因
美容師不足になっている原因にはいくつかの要因があります。
他の業種同様の原因以外に、美容業界ならではの要因も挙げられます。
労働時間が長い、給与が安い
労働時間が長く、忙しい日には休憩すら取れず、働く時間の割には給与が安い。
特にアシスタント時代には、先輩よりも早く出勤して、店舗の清掃から営業の準備をしなくてはなりません。気が抜けない1日が始まります。
さらには、1日中立ちっぱなしで、足もむくんできます。閉店後も後片付けや、翌日の準備、さらには個人練習と時間がいくらあっても足りません。
その割に給与が安いです。
厚生労働省の令和1年度の賃金構造基本統計調査によると、美容師・理容師の平均年収は男性39.3歳で約350万円になります。
これでは、独立資金を貯蓄するのは厳しいかもしれませんね。
スタイリストの待遇の実態
平均年齢 | 39.3歳 |
---|---|
勤続年数 | 11.2年 |
労働時間 | 177時間/月 |
超過労働 | 5時間/月 |
月額給与 | 289,800円 |
年間賞与 | 30,800円 |
平均年収 | 3,508,400円 |
但し、平成21~27年までは、30.0~33.9歳の平均が平成28年~令和1年にかけて36.2、34.2、32.1、39.3歳と平均年齢が徐々に上がっていく傾向が伺えます。
上記のデータは厚生労働省発表の物ですが、スタイリストの方の平均値になります。
では、アシスタントの方々はどうなのでしょう?
これでは魅力ある業界とは言えませんね。
一部では10万を切るという話も聞こえてきます。
責任の重さ
お客様はキレイになりたくて美容室に行きます。
カウンセリングで要望をお聞きし、写真等で確認し、技術力を駆使しても仕上がりがお気に召さないこともあるかもしれませんね。
そんなときの対応の悪さによっては、クレームになってしまう事もあるかもしれません。場合によっては、へたくそ・センスがないなどの暴言を吐かれてしまうかもしれません。
こんな場合、担当を変えられたり、失客して次からは他のサロンに行かれてしまう事もあります。こんなことが続くようであれば、先輩や経営者からの一言や二言の注意を受け個人評価も下がってしまいます。
自分自身の仕事の内容を向上しつつ売上をキープし、さらには売上を上げていきながらお客様に笑顔で帰っていただき、更にはまたご来店していただかなくてはなりません。
サロンのスタッフとしての責任の重さがプレッシャーとして負けないようにしなければなりませんね。
相談できる環境をつくっておくことも大事です
手の荒れが酷くなる
アシスタントの主な仕事にシャンプーがあります。1日何人もシャンプーしたり、薬剤をお流ししたり、シャンプー台での仕事が多くなります。
常にお湯を使う為、だんだん手が荒れてしまいます。しっかりとケアをしていても、追いつかないのが現状で休みの日は皮膚科へ通う日々を送る様になっていきます。
しまいには水ぶくれができ、痒みも伴い常に手をかいている状態になる方もいらっしゃいます。
最後は、ドクターストップがかかり美容師を続けられない方もいました。
また、お客様も担当するスタッフの事はよく見ていますので、手荒れがひどくてお客様に心配してもらう事にもなりかねません。さらには、1日中立ちっぱなしですから、足もむくんだり痛みが出たりもします。
自分の身体ですので自分でしかケアできません。1日に何回もハンドクリームや保護剤、場合によっては薬などをこまめに付けてケアしていかなくてはなりません。
ここも努力ですね。
1人前になるまでには年数がかかる
美容師は人を美しく、可愛くするのが仕事です。
見た目のきれいさも大切ですが、それをキープするお客様自身の心の豊かさをサポートすることもとても重要な仕事になります。
そのためには自分磨きもしていかなくてはなりません。技術だけでも覚えて、練習してOKをもらうのに時間もかかります。
技術も次から次へと課題がいっぱいあります。それをすべて習得していくうちに自分自身の心も磨かれていきます。
下記にアシスタントとして覚えなくてはならない技術のスケジュールを記しました。
1年目の前半 | 接客、シャンプー、マッサージ、トリートメント、ヘアカラー塗布 |
---|---|
1年目の後半 | ヘアカラー応用、縮毛矯正、ブロー・スタイリング |
2年目の前半 | パーマの基本、特殊パーマ、ヘアセット |
2年目の後半 | カットの基本、着付け、メイク |
3年目 | カットの応用(ショート、ミディアム、ロング) |
ステップごとに技術テストがあり、合格して次のステップに移行していきます。すべての項目に合格してスタイリストデビューできます。店舗によっては、上記の技術項目の順番やカリキュラムが違う場合がございます。
また、スタイリストデビューしても、トップスタイリスト、マネージャー、などお店のシステムによりランクアップしていくテストがございます。
こうやってステップアップしていくんだね
最短でも平均で3年はかかります。
これをもっと早くデビューさせようとしたいのがお店側の考えです。サロンによっては、カットデビューしてもお客様に入客させてもらえず、アシスタント仕事を続けている場合もあります。
これは、お店でのスタイリストの人数とアシスタントに人数の関係でアシスタントの仕事をしなくては店が回らない状態に陥っています。
アシスタントの新規採用をしない限りスタイリストとしての仕事が回ってきません。従って給与も低いままになります。
お店の体制の影響してくるのかな
美容業界の構造的な理由
今までのような長時間労働、賃金の低さ、責任、手荒れ、スタイリストまでの年数など、労働環境による要因のほかに、美容業界の構造的問題が美容師不足を招いています。
それは、近年の美容室軒数の増加に他なりません。
年度 | 理容 | 美容 | ||
---|---|---|---|---|
店舗数 | 従業員数 | 店舗数 | 従業員数 | |
平成12年度(2000) | 140,911 | 250,716 | 202,434 | 355,081 |
平成12年度(2001) | 140,599 | 250,764 | 205,204 | 368,057 |
平成12年度(2002) | 140,374 | 252,124 | 208,311 | 383,214 |
平成12年度(2003) | 140,130 | 251,981 | 210,795 | 394,478 |
平成12年度(2004) | 139,548 | 250,767 | 213,313 | 404,674 |
平成12年度(2005) | 138,855 | 250,407 | 215,719 | 416,707 |
平成12年度(2006) | 137,292 | 248,494 | 219,573 | 431,685 |
平成12年度(2007) | 136,768 | 246,861 | 221,394 | 435,275 |
平成12年度(2008) | 135,615 | 244,667 | 223,645 | 443,944 |
平成12年度(2009) | 134,552 | 243,644 | 223,277 | 453,371 |
平成12年度(2010) | 130,755 | 237,602 | 228,277 | 456,872 |
平成12年度(2011) | 131,687 | 240,017 | 228,429 | 471,161 |
平成12年度(2012) | 130,210 | 238,086 | 231,134 | 479,509 |
平成12年度(2013) | 128,127 | 234,044 | 234,089 | 487,636 |
平成12年度(2014) | 126,546 | 231,053 | 237,525 | 496,697 |
平成12年度(2015) | 124,584 | 227,429 | 240,299 | 504,698 |
平成12年度(2016) | 122,539 | 223,606 | 243,360 | 509,279 |
平成12年度(2017) | 120,965 | 221,097 | 247,578 | 523,543 |
平成12年度(2018) | 119,053 | 218,030 | 251,140 | 533,814 |
平成12年度(2019) | 117,266 | 214,279 | 254,422 | 542,089 |
上記の表からも分かるように、理容室の減少傾向に比べ、美容室は増加傾向にあります。
どこの地域でも、個人での独立サロン、低価格サロン、人気サロンの店舗拡大展開やフランチャイズ化などで、廃業軒数よりも開店軒数の方が上回っています。
これにより、サロン軒数が増えてもそこで働く美容師さんの数が追いついていない現状があります。
また、上記に挙げた労働時間の長さや賃金の安さ、技術を身につけるまでに時間が掛かりすぎるなど、美容師を志す方が減少しているのと、美容師免許を持たないとお客様に入れないので、軽い気持ちでの転職はありません。
それだけ、美容師になりたいと言う思いの強さがないと続けられる事もないでしょう。
今の若者たちが、夢と希望が持てる美容業界に変革していかないと人材不足はますますエスカレートしていくでしょう。
あなたのサロンが美容師に選んでもらうために
サロンが欲しいと思う美容師を採用できれば話は早いですが、今どきそんなことは起こりません。
それよりも、数少ない美容学生や美容師になりたいと思っている高校生などに選ばれる美容室に改革して行かなければ新規採用には至らない時代が来ています。
今までは良かったかもしれませんが、これからの時代には通用しない社会に変わってしまいました。
皆さんも、社会環境の変化を感じているはずです。
この美容業界だけが昔のままの徒弟制度のような内容では、働く人がいなくなってしまいます。
そこに気づいた美容室から、いち早く労働環境を改善していき、給与システムの構築や退職後の再雇用(出産等による)、店長経験後のあるべき地位(社内独立や業務委託、フリーランスなど)の確立。
また、早く一人前に育て上げる教育カリキュラムや実践方法、スタイルの傾向や流行などのファッション情報、人とのコミュニケーション能力を身に付けることでカウンセリング力アップにもつながっていきます。
それだけ、自店の独自性を表現する言葉に乗せて、宣伝していくしかありません。
限られた枠の中で、誰に何を伝えたいのかを明確にして、宣伝広告を考えましょう!
自分のお店の事ですから、業者任せにしないで、レイアウトも自分で考えてみませんか?
自分の言葉だから伝わるってことですよね。
サロン側も美容師も意識改革が必要ですね
まとめ
美容師は人をキレイにしながら、その方のライフスタイルにまで携われる仕事だと思います。
それだけ、自分自身にもストイックな部分を要求される場合がありますが、それはお客様のため。でもそれが、毎回お客様の笑顔と、感謝の言葉で帰ってくるのです。
この時が、美容師を続けていてよかったと感じる毎日です。
皆さんもそうではないですか?
これから美容師を目指す方々には、厳しい一面も多々あるかと思いますが、自分を担当してくれている美容師さんをよく見てみてください。楽しんで仕事していると思いますよ。
そんな美容の世界に飛び込んでみませんか?