美容師が30代で独立・開業するために準備しておくこと
美容師の独立・開業について学びましょう
美容師として技術力や営業力を磨き、お客様から支持をいただくようになりキャリアを積んだ後に進む道として、クリエイティブディレクターとしてメディア・イベント・セミナーで活躍する人、店長やマネージャーとして運営側で活躍する人、そして独立・開業を目指す人。今回は独立・開業について「平均年齢」「時期・タイミング」「美容室の開業資金」についてチェックしていきましょう。
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30代が多い美容師の独立・開業
美容師が独立・開業する男女別年代ランキング
男性:1位31歳 2位33歳 3位30歳 4位29歳
女性:1位35歳 2位34歳 3位33歳 4位26歳
(引用:日本政策金融公庫)
美容師が独立・開業する年代は男性・女性ともに30代が多いですね。美容室に勤めてから10年~13年といった頃でしょうか。キャリアを積み30代で美容室の独立・開業を考えている人が多いとデータにはありますが、もちろん実力も資金もある人は20代で独立・開業をされる人もいます。
しかし、「独立・開業=成功」がゴールではありません。ここでは事業の成功を目的として「失敗しない独立・開業」の進め方を、以下の5つに分けてお伝えしていきます。
- 「失敗しない独立・開業」のための5つのポイント
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- タイミング
- エリア・物件
- 開業資金
- 事業計画
独立・開業にベストなタイミングを見極める
美容師としてスキルもキャリアも上がり、お客様からも支持を得られ、お金にも余裕が出るころから開業資金を着々と貯めていくことをおすすめします。開業資金をほとんど金融機関に借りてしまうと、その分返済が増えてしまい、今回のようにコロナウイルスの感染拡大によってお客様が激減したり、休業をせざるを得ない場合など資金繰りがかなり厳しい状態に陥ります。独立・開業を考えているのであれば十分な資金準備も大事ですが、年齢というタイミングも視野にいれておいてください。美容師は体力あっての仕事であり、トレンド情報をキャッチする現場力などを考えると45歳以降に独立・開業をしても10年・15年と安定し続ける確率は下がっていくでしょう。
エリア・物件を決める
まず、エリアや物件を決める前に1~10の内容を具体的に把握しているか確認をしてみましょう。
- エリア・物件選ぶ前の確認事項
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- 美容室の方向性やコンセプトが明確である
- どの年代の顧客層をターゲットにするのか具体的に決まっている
- 出店したいエリア周辺の家賃相場を把握している
- 出店したいエリアの家賃・保証金が周辺の相場と比べて平均値である
- 内装・外装工事を実績がある工事業者に依頼できる
- 出店したいエリアの住民の特性やライフスタイルを把握してある
- 出店したいエリアは新規集客が獲得しやすいエリアである
- 現在担当している顧客のうち何名くらいが見込客として来店されるか把握している
- 運営に必要な人数のスタッフが確保できている
- 材料、店販商品など信頼できる仕入先がある
記載の準備が整っていない状態なのに「良い物件が見つかった!」という理由だけで物件の契約をするのは危険です。よくあるケースが「これ以上の物件はもう出ないかも!?」と思い込み、時期尚早に物件の賃貸借契約を結んでしまうケースです。資金調達の準備(金融機関からの借入の決定など)が整ってから本契約を結ぶようにしましょう。
また、美容室の居抜き物件を探している人は、譲渡価格の妥当性を検証するのと、前の美容室オーナーがどのような理由で閉店したかを確認した方が良いです。店舗の入れ替わりが多い物件だったり、立地的な問題の場合は注意が必要になります。
方向性・コンセプトを決める
そもそも、独立・開業に至る経緯は単なる「思いつき」ではなく、以前から計画を立てていましたか?
「自分の美容室を持ったら実現したい目標」が明確になっていることが大切になります。外観や内装、インテリアにもこだわりたい部分があると思いますが、「落ち着いた雰囲気で親しみやすい美容室にしたい」というような漠然としたイメージではなく「どういうコンセプトに基づいて、どんなイメージの内装にして、どんなサービスを提供するのか?」を具体的に考えておく必要があります。
美容室の内装や雰囲気づくりは重要な点です。なぜならお客様は美容室で長時間過ごすことになりますから、その時間を快適で居心地の良い空間であるよう演出するために、コンセプトに合わせてインテリアを決めていきましょう。
また、今後の課題として経営者になるためのスキルを高めるとともに、美容師としてお客様により満足を提供できるよう、そして他店ではなく自分の美容室を選んでもらうためにも自身の技術面・接客面のセールスポイントを振返り、強みを活かせる戦略をとってください。
必要な開業資金を計算する
ご存知の通り、独立・開業するためには事前に資金を準備することが大切です。通常、美容室を開業する場合にかかる費用の相場は700万円〜1500万円と言われています。賃貸家賃によって変動しますが、最低700万円は準備が必要だと思ってください。起業をするほとんどの人が、日本政策金融公庫(創業融資)からサポートを受けて美容室を開業しています。自己資金でまかなえる人は問題がありませんが、余裕を持ってスタートするためには、金融機関からの融資も検討しておきましょう。
開業資金の内訳例(小規模の美容室)
①運転資金150万円
経営に必要な現金のこと。毎月の固定費が50万円だとして3か月分の150万円は確保しましょう
②内装・外装工事費480万円
美容室の内装・外装を整えるための費用のこと。素材やグレードによって相場が変わりますので、2社以上から見積を取り、工事価格の妥当性や相場観を調べてください(坪単価30〜50万円が相場)
注意点として、自分が調達できる金額(自己資金や借入金等)を算段した上で決めてください
③テナント賃借費用110万円
家賃や物件にかかる費用のこと。保証金(敷金)・礼金・仲介手数料・前家賃が主な内訳となります
④機械・什器・備品等200万円
プロセッサー・促進器、セット面・椅子、シャンプー台のこと。他にも洗濯機・パソコン・インテリア・最初に仕入れる薬液や店販商品が大きな額ですが、その他細かい備品も合わせると最低でも200万円は準備する必要があります他にも、開業前に広告宣伝費やスタッフ募集費が必要な場合があります。
事業計画を決める
最初は、予想通りの売上が見込めないことを想定して、手堅い収支計画を立ててください。たとえば「売上は低め・経費は多め」といったように試算をして、それでも経営がきちんと成立する収支の計画であれば安心です。開業後に「計画よりも経費が多くかかってしまった」というケースが多いです。何にどれぐらいの経費がかかるのかを細かく把握して事業計画を立てましょう。
- 開業前の確認事項
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- 開業してから半年間の予想売上の根拠を数字で示すことができるか?
- 予想売上が過大になっていないか?または過少になっていないか?
- 借入の返済は無理なくできる計画になっているか?
- 自己資金が少なく借入依存の計画になっていないか?
- 利益が少ない場合に、補填できる財源(現金)は備えてあるか?
独立・開業するにあたっては、開設届・保健所の検査など必要な手続きが他にもあるので余裕をもって計画的に進めましょう。また、融資を受ける場合は、上記の内容を踏まえて日本政策金融公庫(創業融資)や金融機関に相談をしてください。自己資金が多いほど、開業後の不測の事態に備えることができます。無理のない範囲での投資と借入が健全な経営の一歩です。総投資額の3分の1を目安に自己資金を準備しておきましょう。
まとめ
「失敗しない独立・開業」の進め方をタイミング、エリア・物件、方向性・コンセプト、開業資金、事業計画の5つに分けて開業準備についてお伝えしました。もし30代で独立・開業を目指している人は参考にしていただければ幸いです。
最後になりますが、気持ちよく自分の美容室がオープンできるように周囲への理解も必要です。資金調達をするために日本政策金融公庫(創業融資)や金融機関から借入を希望する人は家族に、そして現在美容室に勤めている人はお世話になったオーナーやお客様に迷惑をかけないためにも半年前には周囲への理解を求めておきましょう。